ものを「説明するとき」の話し方と、何かを「報告するとき」の話し方は違って当然だ。ただし基本は、ここまで述べてきたことと同じ。
相手にわかりやすい話し方で、そして具体的に、である。時間配分を考えて、話がどこかに脱線して時間オーバーになりそうになったときには的確に本題に戻す、である。
その上で、いくつかアドバイスをしておこう。まずは、説明について。
ある会社の営業の担当者がいっていたが、お客さんに商品説明をするときのコツは、大切なことは何度か繰り返し、また、相手に理解してもらっているかどうか確認を取りながら話を進める、ということだそうだ。
人は、よく聞いているふりをしながら、人のいうことをあんがい聞いてはいない。
いや聞いているのかもしれないが、そのことがしっかりと頭の中には入っていないものだ。
こんな実験があったそうだ。パーティーで、そこへやってきた人たちに挨拶がてら
「お久しぶりです。お元気そうで。じつは今朝、祖母を殺したんですよ」と明るい口調でいってまわった。この驚くべき告白に気づいた人は、だれひとりとしていなかったそうだ。にこやかに笑いながら「そうですか。それはたいへんですね」とあいづちを打ちながら、相手が何をいっているかは理解できていない。
だから「繰り返していう」と「確認を取りながら」が大切なのである。
【話し方のツボ】大切な点は何度か繰り返し、確認を取りながら話を進める。
①人はあんがい、人の話を聞いていないもの。容易に「わかってもらった」と安心しない。
②「この点は、いいですか」と確認を取りながら、大切なことは何度か繰り返していう。
③ちゃんと説明したことであっても、「聞いてない」といわれることもある。要注意。
④説明するときは、長話になりがち。時間配分に注意しないと、ダラダラ口調になる。
52 同じ言葉でも、人によって受け取られ方が異なる
ある会社で、顧客からくる商品の問い合わせを、電話で対応する係りの人から聞いた話。この人は女性だが、同じ女性から電話があったときにはていねいに商品説明ができる。
しかし男性から電話があったときは、声の感じから「こんな人とは気が合いそうだな」思えたときはきっちりとした商品説明ができるが、「なんだか怖そうだな人だな。意地悪そうな人だな」と感じてしまったりすると、言葉足らずの商品説明になることがあるという。
これはとても正直な告白ではないかと思う。何か説明するときは、大切なことは繰り返し述べ、確認を取りながらとはいっても、相手が印象が悪い人であったりすると、
ついそのような努力をすることを怠りがちになる。「これはこうです。じゃあ、さようなら」といった、はしょった説明の仕方になりがちで、その結果「事前に説明していたはずです」「いいえ、聞いてません」といったトラブルにも発展する。
聞く側としても、関係的にうまくいっていない相手だったりすると、よく理解できていないのに、
「あーあー、わかった、わかった。わかったから、もういいでしょう」となりやすい。その結果、「いった」「聞いてない」ということになりがちなのだ。
説明をする側も聞く側も、説明はビジネスライクに、極力感情を交えずに理性的に、というのもコツである。
【話し方のツボ】感情を交えずに話をし、人の話を聞くよう心がけよう。
①怖そうな人だから「手短に話をすまそう」ではなく、きっちり詳しく説明をする。
②意地悪そうな人だから「簡単に話を終わらせよう」ではなく、事細かに説明しておく。
③ウマが合わない相手だから「話をしたくない」ではなく、よく話し合うようにする。
④好悪の感情を交えて話をするから「いった」「聞いてない」と口論になる。注意。
53 報告は説明ではない、事実だけを手短に話す
何を報告したいのか、要領をえない人がいる。「あのー、ご指示通りに○○さんに、お目にかかってきましたが、ええ、それはもう○○さんは立派な方でした。ああいう人とおつき合いしておくことは、わが社のためになりますよ。
多方面で活躍されているそうです。応接間には税務署や、消防署や、福祉団体からもらった感謝状がいっぱい飾ってありましてねえ。じつに立派な方だそのー、何ですかねえ、えーと、何でしたっけ」と、最後には自分でも何がいいたいのかわからなくなる。聞いている人も、
「それで、いったい、どうした?」となる。
報告は基本的に「何が、どうなった」かを手短に述べればすむ。「〇さんは、こうおっしゃってました」「きのうの売り上げは、いくらでした」「だれだれさんから、電話がありました」「先方へ、見積書を発想しておきました」。それ以上のことは、問われたときに答えればいい。
報告とは、説明ではない。説明であれば、それなりに状況を詳しく話す必要もあるだろうが、報告であれば事実を述べるだけでよい。
報告は「あったことを全部話すもの」と信じている人もいるが、必要のないことまで話すことはない。
報告に、個人的な印象や感想を混ぜ込むことも禁物。相手は「あなたは、どう思っているか」を知りたいわけではなく、事実を知りたいのである。
「あのー、そのー、えーと」の乱用も禁物。話が、通じにくくなる。
【話し方のツボ】必要のないことまで報告しない。「何が、どうなった」かが重要。
①こまごまとしたことを長々と報告するのではなく、必要のない話は避け、手短に。
②結論は最後にいうのではなく、最初に述べる。そのほうがインパクトが強い。
③個人的な感情や判断は差しはさまない。自分の印象や感想は、聞かれたら述べる。
④「こうなるはずだ」という推論を前提に話をするのではなく、客観的なことだけ話す。
54 「報告しない人」は、だれからも信頼されない
こちらから「あの件、どうなった」と問い質して、やっと「ああ、あの件でしたら、もう終わりました」などといってくる。
「いつ」と尋ねると、「はい、先週に」と答える。
「終わったら終わったって、報告するように」とアドバイスするのだが、「はあ、そうですか」と、あまり真剣に受け止めていない。報告をしない人は困る。
きちんと報告できない人は、組織の中で信用されない。職場のことだけではなく、土曜日の夜になって「あ、そうそう、あしたの日曜日だけど、接待ゴルフにゆくことになったから、君の買い物につき合うって約束していたけれど、あれダメになったから」などといい出す夫、きっと奥さんからは信用されまい。「それならそうと、なぜもっと早くにいってくれないのよ」と、ケンカのきっかけにもなる。
きちんと報告ができるかどうかは、人と人との信頼関係の基礎だ。「報告しようと思ってはいたんですが、忙しくてバタバタしていたものですから、その暇がなくて」
という人もいるが、、報告というものは「暇を見つけて」するものではなく、報告自体が大切な仕事のひとつなのである。
何かしら気まずい問題が起こったとき、期限が遅れそうになったとき、約束したことを守れそうになくなったとき、失敗したとき、ミスをしたとき…必ず、すぐに報告を入れること。報告の遅れが、次のトラブルを呼び込む。
【話し方のツボ】報告は「ちゃんと、いますぐ、こまめに」をモットーにしよう。
①人から報告を求められるまで報告しないのではなく、率先して報告する。
②途中経過を報告しないのではなく、こまめに中間報告をし、終わったらまた報告をする。
③報告なんて面倒、報告は二の次ではダメ。報告も大切な仕事。
④気まずい問題であればあるほど報告を遅らせるのではなく、早急に。