
9 まわりくどい話し方の人は、突然キレることがある
精神医学に「迂遠(うえん)」という言葉がある。話がまわりくどくて、いったい何をいいたいのかわからない。そんな話し方のことをいう。
性格的にいえば、いわゆるお堅い人に多く、冗談をいっても笑ってくれないタイプ。几帳面で、細かいことが気になる。職業的にいえば、学者、エンジニア、経理のエキスパート、教師といった人に多い。
話しやすいか話しづらいといえば、話しづらいほうに属する。注意点は、このタイプは基本的にがまん強い人が多いのだが、同時にキレやすい面もあるという点だ。
あまりしつこく「まわりくどいんだよ、あなたの話し方は。もっとスパッと、いいたいことをいえないの」と責め続けたりすると、突然「もういい」と怒り出して席を立つ。
話し方がまわりくどくなるのは、頭が悪くて物事を理路整然と、整理できないからではない。むしろ頭のいいほうだが、持ち前のまじめな性格から、キッチリと説明しないと気がすまない。それが往々にしてキッチリキッチリし過ぎて、人の耳にはまわりくどく聞こえることになる。
この人と上手につき合ってゆくには、ある程度の忍耐が必要だ。この人がすべてを語り終えるまで、じっと耳を傾けておくこと。それができれば、じつはツボを心得た、
なかなかいいことをいっていることがわかる。
【話し方のツボ】まわりくどい話し方だと思っても口をはさまず話は最後まで聞く。
①まわりくどい話し方の人に「何を、いいたいんだ」のひと言は禁物。相手はキレる。
②説明が長い=くだらない話、ではない。よく聞けば、いいことをいっている。
③頭がよく論理的な人ほど、話が長くなる。話が長い人=バカな人、ではない。
④話が長い人は、まず冒頭に結論を述べる話し方を身につける。説明は結論を述べてから。
10 いちいち「話が大きい」人には、あまり近づくな
物事をとかく大げさに話し、相手の驚いた表情や反応を見て喜ぶ、そんな人がいる。
もともと自慢話が得意で、性格的には野心家で出世欲が強い。また我が強いという面もある。男性であればお山の対象、女性であれば女王様タイプである。
いや、いい方を換えれば、男性であればお山の大将にしかなれない人、女性であれば、女王様にしかなれない人であり、ヨイショに弱い。ふつうの人なら、過度におだてられたり、ほめられたりすれば、かえって居心地が悪くなり、何か裏があるのではないかと疑ったりするものだが、このタイプの人は何も疑うこともなく、ますます上機嫌になる。だから、うまくつき合ってゆくためには下出(したで)に出て、プライドをくすぐってやればよい。
ただし、注意しておくべき点は、あんまりヨイショをし過ぎると鼻が高くなって、尊大なもののいい方が目立つようになり、あなたを家来のように扱ったり、侮辱的なことも平気でいったりするようになる。そのくせ、いい見返りがあるとはかぎらないのだからヨイショもほどほどに、である。
こんなタイプの人に敵対的なもののいい方をしたり、見下すような話し方をしたりするのだけは避けたい。プライドを傷つけられたことを根に持ち、いつか復讐しようと考えていることもある。ある程度の距離感を持ってつき合ってゆくのが無難である。
ときどき会って、赤ちゃんをあやすような気持ちでお相手してあげれば十分だ。
【話し方のツボ】ヨイショしたからといって相手は味方になってくれるわけではない。
①自慢話の多い人には、聞き役にまわる。自慢に自慢で対抗してはならない。
②ヨイショに弱い人は、図に乗りやすい。ヨイショをし過ぎてはならない。
③目立ちたがり屋さんは、意外に嫉妬深かったりする。バカにするようなことはいわない。
④お山の大将タイプとは、少し距離感を置いた話し方を。子分にされてしまうから。
11 からだの不調を嘆く人は、人の噂が気になっている
「最近、胃の調子が悪くって」「夜、よく眠れないのよねえ」「なだか、からだがだるいんだ」と、からだの不調をよく訴えるのが、いわば口癖のようになっている人がいる。
ほとんどのケースはストレスから生ずるからだの不調なのであろうが、性格的にいえば神経質タイプで、はつらつさが欠如している。グチっぽい話が多く、「来週までに仕上げろといわれたって、もう、どうしたらいいのよ」「こんな状況じゃあ、むずかしいよなあ」と、いつもブツブツとつぶやいている。
この人は、人の目、人の噂が気になって、「部長があなたのことを、ちょっと土壇場に弱いところがあるな。プレッシャーがかかるような仕事は任せられないな、っていってたわよ」といった話を聞いたりすると、ひどく気に病み、そのことが頭から離れなくなり、自らストレスを抱えて、あげくは出社拒否、うつ、引きこもりなどにエスカレートすることもある。
この人には、マイナス情報をあたえるのではなく、ことあるごとに励ましの言葉、たとえば「だいじょうぶ」「あなたならできる」「あなたって、自分では気づいていないのかもしれないけれど、すごくいいわよ」の、ひと言が大切だ。プラス情報をあたえることによって、ストレスも軽減され、明るい会話もできる。
【話し方のツボ】安心感をあたえる言葉でたくさん語りかけよう。
①体調不良の訴える人は、自分がどう思われているか気にしている。ほめてあげよう。
②周囲のことを気にしている人には、「そのままでいいんだよ」と安心させる
③人の噂を気にする人には、プラス情報をあたえて不安を取り除く。
④自信をなさそうにしている人は、「励まして動かす」が話し方のコツ。
12 人づき合いの悪そうな人も、おしゃべりを求めている
いつも自分の世界に閉じこもっていて、人づき合いの悪そうな人には、「さて話しかけていいものだろう。ほっておいたほうがいいのだろうか」と迷い、「何か話しかけたりしたら、イヤな顔をされてしまうのではないかしら」と不安になる。しかし、一見そんなふうに見える人も、じつは、だれかに話しかけられることを望んでいる。
ある大学で、こんな実験があったそうだ。みんなでワイワイやるよりも、どちらかというとひとりでいたいといった性格の学生を数人選び、ひとりひとりを密室に閉じ込め、本人には告げずに、その様子をテレビカメラで観察した。
さて、どうなったか。ひとりで狭い部屋に閉じ込められていることにだんだんと耐えられなくなってきて、ひとり言をいい出す人がいる。歌をうたい出す者もいる。イライラし始める者もいるある学生に至っては密室から出てくるときに叫んだのだそうだ。「だれかと、おしゃべりがしたい!」と。
人とおしゃべりすることを避けているように見える人であっても、おしゃべりをする相手がいる、おしゃべりができるということが、うれしいことには変わりはない。
何か話かけてみよう。
【話し方のツボ】おしゃべりは人生の喜び。人に話しかけるのをためらうことなかれ。
①孤独癖がある人も、じつはよくしゃべる。話をする、きっかけを持とう。
②自分の世界に閉じこもっている人も、じつは社交的。
③人づき合いの悪そうな人でも、おしゃべり友だちになれる。
④見かけで人を判断しないことも、話し上手になるコツである。