
1「知らず嫌い」をやめれば、親しげな話し方ができる」
知らない人から、「あれ? モタさんでしょ」と親しげに声をかけられることがある。
ふつうは見も知らぬ人に話しかけることはできないものだろうが、「モタさーん!」と同級会で久しぶりに級友に会ったかのような高ぶった声の人もいる。
考えてみれば、「見も知らぬ」というのは私からの味方なのであって、相手はたとえ初対面であっても、私の本や講演を通して、あるいはときどきのテレビ出演を通して、じつは私のことを知っているのだ。
相手を知ることは、親近感を深める第一歩なのだろう。反対によく知らないというのは、反感や嫌悪感を増幅させる原因ともなる。
食わず嫌いというが、人間関係でいえば「知らず嫌い」だ。私たちはじつは、その人のことをよく知らないまま悪口をいっている、そういう例は多いものだ。
嫌いな人、反感を覚える人から遠ざかろうとするのではなく、むしろ近寄っていけば、相手の「いいところ」も見えてくるはずだ。性格的なことだけではなく、趣味が同じだった、同一の友人を知っている、出身地が同じだった……など、意外な共通点が見つかり、一気に親しくなることもあるだろう。
相手のことを知れば知るほど、話し方が親しげになる。話ははずみ、楽しくなる。
【話し方のツボ】相手のいいところに注目すると会話が楽しくなる。
①「あの人の、ここが嫌い」ではなく、「ここが好き」といえる人になる。
②「あの人が嫌い」の、ほとんどの理由は、あの人のことをよく知らないだけ。
③質問上手になって、その人のことをよく知ろう。知れば知るほど、親しみがわく。
④初対面の相手でも事前に知識があれば、親しい話し方ができる。
2 気のきいたひと言で好かれ、うっかりのひと言で嫌われる
壁に突き当たって悩んでいる人に、「あなたなら、だいじょうぶ」。
仕事に追われている人に「たいへんそうですね、がんばってください」。
町中で困っているようすの人に「何か、私にできることはありますか」。
あるいは、型苦しい雰囲気をちょっとしたジョークで和らげる。
こんなひと言をいえる人は、間違いなく人に好かれる人だ。
ちょっとしたひと事で嫌われる人もいる。うっかり相手の琴線にふれてしまったために口をきいてもらえなくなったという経験のある人もいるだろう。悪気があってのことではないのに、修復不可能なほど人間関係がギクシャクしてしまうのだから怖い。
どんなに仲のいい相手であろうとも、いってはいけないひと言がある。容姿のことで、デブ・ブス・ハゲ類の言葉。相手の身内の悪口も笑い話ではすまされない。
「あなたのお母さんって、世間が狭いわね」「おたくの息子さん、ノロノロしてますね」など。いくら冗談のつもりでも、相手はそうは受け取らない。
要は、人への心遣いの問題だ。相手の立場になれる人が、さりげなく人に好かれるひと言がいえ、相手の立場まで気が回らない人はうっかりのひと言で嫌われる。
痛恨のひと言にならないように願うばかりだ。
【話し方のツボ】人への気配りを、ちょっとした言葉でいい表せる人になろう。
①悩んでいる人を見て見ぬふりをするのではなく、「だいじょうぶ、あなたなら」。
②困っている人を見過ごしてしまうのではなく、「どうしたの。何か、あったの」。
③いってはいけないこと。相手の容姿の悪口、親兄弟の悪口、生まれ故郷のある悪口。
④いってはいけないこと。相手の過去の、恥ずかしい失敗。劣等感を覚えている事柄。
3こんな状況では、話題にしてはいけないこと
仕事を終えてから「お疲れ様」と同僚と一杯やる席で、むずかしい話をして「お堅い人だなあ」というレッテルを貼られるのもイヤである。
反対に職場で、まだ就業中なのに「今週末の競馬は」「明日の合コンの件だけど」
とチャランポランな話ばかりするようでは信頼感を失う。
異性のいる席で下品な話ばかりする人は、異性のみならず同性からも白い目で見られる。若い人と話をするときには、それなりの話題の選び方がある。年配の人と話をするときにも同じだろう。
ときと場所にふさわしい、むずかしい話もできる、気軽な笑い話もできる、まじめな話もできれば、遊びの話もできる、そういう柔軟性が大切だ。状況に応じて、どういう話題を取り上げるか、その判断は人間関係づくりに大いに関与している。
さて、その意味で、いわば取り扱い注意の話題、こういう話題を持ち出すと手痛い失敗をするというものがある。
政治の話、宗教信仰の話、勝負事賭け事の話、人の病気や死に関する話…むやみにこういう話をすると、よけいな対立を生んだり、誤解を受けたりすることもある。
何人かの人が集まっている場所ではもちろん、また一対一の場合でも、とくに、知り合って間もない人とは、こういう話は避けるほうがいい。
【話し方のツボ】その場の状況、雰囲気を敏感に察して話題選びができる人になろう。
①政治や宗教の話題には、要注意。誤解から危険人物のレッテルを貼られることも。
②賭け事の話はポテトチップスのようなもの。話し出したら、止まらなくなる。
③病気、死の話は、相手には「どう返事をすればいいかわからない」という困惑を呼ぶ。
④その場に応じて、お堅い話も、柔らかい話もできるようになろう。