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button-only@2x 「買います」という前に、深呼吸して十数える

必要なモノは、買えばいい。ほしいモノがあれば、買えばいい。

お金のムダ遣いはするなとはいっても、たんに倹約しなさい、といっているわけではない。ケチになれ、と説いているのではない。

—-ひとりの老人が耳が遠くなって、補聴器をつけることになった。しかし補聴器の値段を聞いて、あまりに高価なのに驚いてしまった。

そこでラジオのイヤホーンを耳に突っ込んでおくことにした。

友人が「そんなことをしてなんの役に立つっていうんだい?」と、ばかにするようにいった。

「いいや、効果大だ。これをつけてからというもの、みんなワシに話しかけるときは、大きな声で話しかけてくれるようになったんだものな。そのおかげで補聴器なんぞつけなくても、相手の話を聞くのに不自由はしないよ」

こんな話もある。

先ほども述べたように「何も考えずに」モノを「いただきます」というのは、よろしくない。要らないモノを溜め込む原因となる。

そこで、ほしいと思っても、すぐには買わない。ひと呼吸置いてみる、よろしくない。要らないモノを溜め込む原因となる。

そこで、ほしいと思っても、すぐには買わない。ひと呼吸置いてみる、という習慣をもつようにしてみたらどうか。

「三日間、限定販売」「二十台限りの大安売り」と、そんな宣伝文句を目にすると、「すぐに買わなくちゃ」と気持ちがあせるのもわかるが、大丈夫大丈夫。

明日は明日で、また大セール、限定販売、大安売りをやっている。もしやっていなかったら「縁がなかったのね」と、あきらめればよい。

そこで、ひと呼吸、実際に深呼吸してみよう。心の中で十数えてみてもよい。そのあいだに、それを使っている自分、それを着ている自分をイメージしてみよ、だ。

「安売りだから、とりあえず買っとこう」が、安物買いの銭失いのもと。安売りであろうがなかろうが、なんのために買うのか、買ってどうするのかを、しっかりイメージしてモノは買うこと。

行き当たりばったりでは、判断を誤る。

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狭い家に暮らすと、買い物上手になる?

モノを買うときは、置き場所のことを考えてみる。置き場所があるモノは買い、置き場所が思い当たらないモノは買い控える。これも要らないモノを増やさないコツ。

ただし、とつけ加えておく。私たちは、収納スペースがたくさんあれば、それだけモノは片づくのだと考えがちだ。

はたして、そううまくゆくのだろうか。

広い収納スペースがあるものだから、安心して要らないものをどんどんそこへ放り込んでゆく。だからかえってモノが溜まってゆく、ということもありはしないか。

ある女性の話。部屋にモノがあふれ返り、しょうがなく収納スペースのもっと広い部屋へ引っ越した。しかし、そこの収納もいっぱいになり、また引っ越した。だが、また同じこと。

結局、やっと、これはもう、思いきって捨てるしかないという結論に達したということだ。

本来、モノを収納するというのは、かなりの創意工夫がいる。その創意工夫が面倒で、とにかく押し込めでギュウギュウ詰めにして、しまったモノを使いたくなっても手前のモノが邪魔になって二度と取り出せなくなる。奥のモノを取り出そうと思ったら、手前にあるモノもいったん外に出さなければならない。

それが面倒なばかりに、そのまま手もつけず収納の肥やしになるというパターン。

それだったら、たしかに結論は「思いきってモノは捨てる」ほうがよいというところに落ち着きそうだ。

私も、ときどき仕事机の引き出しを開けて思うことがある。

そこに入っているモノの七、八割がたは、めったに使わないもの。使ったとしても一年に一度か二度、あってもなくてもいいようなモノばかりだ。しょっちゅう使うモノといえば一番上の引き出しの、隅のほうに置いてあるクリップとペンのインクぐらいのもの。

こんなことなら、いっそ引き出しのない机を使うほうが、モノの整理整頓がつくのではないか。なまじ引き出しがあるばかりに、それに安心して要らないモノばかり放り込むことはなくなるだろうから。否応(いやおう)なく要らないモノは捨てる決心をせざるをえなくなるだろうから。

家の中も、そうではないか。

収納スペースは「安心できないくらい」狭いほうが、むしろよろしい。モノの置き場所がないぐらいのほうが、ほんとうに必要なモノを厳選して買うようになるだろうから、である。だから不要なモノが一方的に溜まってゆくこともないだろうから。

あえて収納スペースの狭い家で暮らす、これも買い物上手になるコツではないか。

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ほしいモノがあったら、実際に使っている人の意見を訊く

上手な買い物をする際に大切なことは、イメージしてみるということ。

そのために、そのモノを実際に使っている人の意見を訊くという方法もある。

パソコンのインターネット上には、日用品の「使い心地」を報告するサイトがいくつかあって、人気を集めているという。

商品の宣伝文句を信じて購入したが、実際使ってみると、「何、これ。全然違うじゃないの」

ということが少なくはないらしい。

その点、そのモノを実際使っている人の意見は参考になる。

もちろん価値観の違いもあるし、使う目的も同じではないのだから、全面的に信じることはないのだろうが、しかし判断材料としては大いに参考にはなるだろう。

ともかく、モノを買うときは、訊き上手、会話上手になることではないか。黙っていないで、お店にいる店員さんにも色々訊いてみたい。

「これ売れてますか」「どんな世代の人が買ってゆきますか」なんでもいい。ほしいというモノをすぐにレジへもってゆくのではなく、その前に店員とひとことふたこと会話をかわし「ひと呼吸置いてモノを買う」。そしてその間に「想像力を働かせてみる」ことだ。

これが買い物上手になって、ムダな買い物をしないコツである。

ただし、こんなことをいう人もいる。店員さんに、買おうと思っているモノについて尋ねてみることはいいが、その性能について詳しく知りたいときには面倒でもメーカーに直接問い質すのがよいそうである。

店員さんの中には、よく知っているふりをして、間違ったことをいう人がいる。家電製品を買うときなど、要注意だそうだ。

なるほど、そんなこともあるのか。私も気をつけよう。

モノは、家族と相談してから買うというのもいい。家族との会話も、モノのイメージをふくらませてくれる。

家族との交流の機会も増えて、これもよさそうである。

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ローンの支払いが終わらないうちに、新しいモノを買うな

まずは、こんなジョークを紹介しておこう。

一家のご主人がうれしそうに、というよりも、ほっとした顔で、

「ローンで購入したこの家具だけど、やっと来月に払い終えることができるんだよ」

それを聞いた奥さん、瞳を輝かせながら、

「そう、それはよかったわ。これでやっとこの家具を捨てて、新しいモノに買い替えることができるのね」

と。なおもローンの支払に汲々とする生活が続くのかと、ご主人はうんざり。

ところで私は、こういう夫婦であればまだいい、健全な経済感覚をもった夫婦ではないか、と思うのだ。

というのも世の中には、先のローンの支払いが終わらないうちに新しいモノ新しいモノと買いましてゆく人だっているからだ。

中には、そうやって雪だるま式にふくらんでゆく月々のローンの支払いができなくなって、夜逃げやら自己破産やらする人だっている。致し方なく家族崩壊に追いやられる人だっているだろう。

そんな人に比べたら、ひとつのローンを支払い終えるまで、新しいモノを買うのをがまんできるのだから、いいではないか。こういうつましい暮らしをしている夫婦なら、家族崩壊の心配もない。

ある主婦が、おもしろいことをいっていた。

主婦というのは自分が何か、こだわりをもっているひとつのアイテムを重複して何個も買い揃えてしまう癖があるというのだ。

たとえばワイングラス。湯飲みを買いに食器売場にやってきたはずなのに、デザインや色彩のいいワイングラスがあると、つい手が伸びる。

旅行先でも、よくワイングラスを買って帰る。しかもガラス工芸が盛んだという土地へゆくと、六個も十個もまとめて買って帰る。

だから家の食器棚はワイングラスばかりとなってゆく。

もともとワインが好きで毎晩たしなむ人なのだそうだが、子供はみな独立し、いまは夫婦のふたり暮らし。いくらこだわりがあるとはいえ、そう十個も二十個も買い揃えてしまい、そんな必要もあるまい、と彼女自身よく反省するそうだが、いいものがあるとどうしてもほしくなってくる。

まあワイングラスのようなモノであれば、ローンを組んで購入するようなモノでもないのだから、ローン地獄に陥って自己破産する心配はないのかもしれないが、しかしそれはそれとして、使いきれないくらい同じアイテムのモノを溜め込んでどうするのかと疑問もわいてくるのだ。

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同じアイテムのモノを、なぜか揃えたくなる心理

同じアイテムのモノを、いくつも揃えたくなる。

ある年配の女性の場合は、カレンダーだそうだ。

だから年末になると、たいへんである。銀行や郵便局など、無料で来年のカレンダーを配布しているところへゆくと、必ずもって帰る。つき合いのある近所の電気屋さん、肉屋さん、酒屋さん、花屋さんからも、もらってくる。

その上、街に出かけたとき、掲載されている風景写真か何か気に入ったものがあれば買ってもくる。「日めくりカレンダーには、勉強になる格言が沢山載っているものね」と、それも買ってくる。

たちまち十本あまりのカレンダーが溜まることになる。

部屋数が十もある大豪邸に暮らしてるなら、まだいい。しかし残念ながら部屋数みっつに台所、トイレに風呂という、ごく一般的な家庭。したがって部屋の至るところにカレンダーが吊るされることになる。玄関にも、トイレにもカレンダーが吊るされている。

この女性も、部屋じゅう、こんなカレンダーだらけにしていったいどうするつもりなのだ、と反省するときもあるそうだが、やめられない。

さらにこの女性、月がすぎて破り取ったカレンダーも捨てられない。「裏の白い紙をメモ用紙にするから」という理由なのだが、メモ用紙はメモ用紙でちゃんと買い揃えてある。だから破り取られたカレンダーは、そのまま部屋の片隅に溜まってゆくことになる。

ところで、私の見るところ、同じアイテムのモノばかり、このようにいくつも揃えたがる人には「倹約家」が多いように思う。

いい換えれば、しっかりした人。

子供の朝シャンに「水が、もったいないじゃないの。きのう、頭は洗ったんでしょう」と文句をいっているような奥さん。

亭主には、「しょっちゅうゴルフにゆくわけじゃないでしょ。せいぜい一年に二、三度なのに、そんな高価なゴルフクラブを買ってきてどうするのよ」と口やかましいことをいっているような奥さん。

そんなしっかりした奥さんが、たとえば掃除道具にこだわりをもっていて、ホウキやハタキを何本も買い揃える。買い溜めしておいても、いずれ使うんだからと様々なメーカーの洗剤をいくつも買ってくる。

そんなことをしがちなのだ。

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倹約家の奥さんの「ダイエットのドカ食い」の心理とは?

それほど高価なモノではない。ワイングラスとか、カレンダーとか、掃除用品であるとか、安価なモノだ。

しかし安価なものであっても、そう何個も不必要に買い揃えてしまったら、やはりお金のムダ遣いになる。

それに置き場所にも困る。要らないモノが家にあふれることにもなる。

しかしなぜ、しっかりした倹約家の奥さんである筈の人が、どこかでそんなムダ遣いをしてしまうのか。

私は、ダイエットのドカ食いと同じ心理ではないかと推測している。

神経質なほど、ふだんは太ることに注意している。

食事のカロリー数を、食事ごとにいちいち計算し、毎日ノートに記録しておく。食事をする時間帯にも気を使う。

パンにはもちろんバターは塗らないし、ヨーグルトは脂肪分が多いからといって控えている。ダイエットのためには、よく噛んで食べるのがよいというので、時間をかけてほんとうによく噛んで食事を摂るようにしている。

しかし気を使うのは、ストレスになる。気を使えば使うほど、大きなストレスになる。そうやって心に蓄積していったストレスが、ある日突然爆発する。それがドカ食いだ。

それと似た現象が起こるのだ。

ムダ遣いをしないよう、しないようにと細かいところまで注意を怠らない。家族たちの消費行動にも、そして自分自身にもいつも目を光らせている。

買いたいモノがあっても、がまんする。我慢我慢でそういうことが知らずストレスとなって心に蓄積してゆくのだ。

そのストレスが、ときとして爆発する。それでも安価なモノを買い揃えるというのは、さすが倹約家の奥さんなのだが、同じアイテムのモノを不必要なまで買ってしまうという行動に走らせるのだ。