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役員が一堂にそろった会議でのプレゼンテーションでガチガチになり、言葉に詰まるわトチるわで、何をいいたいのかわからない人もいる。

お見合いの席で緊張して、いいたいことの半分もいえずに断られてしまった人もいる。この場合は、緊張したことだけが断られた理由ではないかもしれないが。

結婚披露宴でのスピーチで、気の毒になるほど汗がタラタラ流れ、話し方がシドロモドロになっている人もたまに見かける。

…過度の緊張は、話し方をヘタにする。

私も、人前で話すときは緊張で、心臓がドキドキする。そんなときの対処法は、「うまく話そうと思ってはならない」と、自分にいい聞かせることだ。立派なことを話そう、人の心を動かすような話をしたい、自分の話で感心させたい…と、自分のランクアップを考えるから、その反動で「失敗したらどうしよう。うまく話せなかったらどうしよう」とよけいなことが頭を駆け巡り、ぴりぴりと緊張感が高まってしまう。

ヘタでもいいから、自分なりの話し方をしようと思っていればいいのである。

政治家の話し方も、けっして流暢とはいえない。田中角栄さんはその典型で、流暢ではないけれど、妙に説得力があった。それは話し方を「飾らない」ぶん、個性が押し出されたからだろう。上手ではないが、個性的であったのだ。

【話し方のツボ】上手に話すことを考えるよりも個性的な話し方をする。

①上手に話そうと思わないこと。個性的な話し方がよい。

②実際には、流暢な話し方ができる人などめったにいない。ヘタで、もともと。

③ヘタでも話し方に誠意があれば、人は感動する。

④人前で自分をランクアップさせようと思ってはならない。

 

68 話す態度が変わりやすい人には、周りの人が気疲れする

お酒を飲んでいるうちに、それまでおとなしかった人が急にわめき散らし、なかには猛獣に変身する人もいるから要注意。かと思えば、陽気なだけが取柄であったような人がグダグダと泣き言をいうこともある。

こういう人は、精神的にそうとう溜まったものがあり、ふだんはがまんしているが、酒に酔って我慢がきかなくなったのだろう。酒を飲むよりも、スポーツで汗を流してストレス解消に励むことをおすすめしたい。

こういう兆候は、よろしくない。心の健康という意味からもよくないし、周りにいる人たちに迷惑をかけて人望を失墜させることにもなりかねない。

一方で、シラフなのに、相手によって話し方がコロコロ変わる人もいる。力の強そうな相手には迎合するような話し方になり、目下の者には尊大なものいいをし、若い女性にはやさしい口調で、年齢のいった女性には冷たい話し方。あるいは、男性の前ではかわいこぶりっ子で、同性といっしょのときには不機嫌そうに押し黙る女性など。

相手によって言葉遣いがていねいになる、フレンドリーになる、敬語を使う使わない…というのは大人として当然だが、相手によって媚(こ)びたり迎合したりという話し方が極端に表れる人は困る。人から信用されなくなるし、周りの人にストレスをかけるのである。

【話し方のツボ】相手の好き嫌いで話し方を変えるのはやめよう。

①大切な人には正しい敬語で。しかし媚びるような話し方はダメ。

②力のある人には、ていねいな言葉遣い。しかし迎合するような話し方はダメ。

③下の立場の者とは、フレンドリーに。見下すような話し方はダメ。

④下心で話し方を変えるのはダメ。だれに対しても節度のある話し方を。

69 井の中の蛙の自尊心で、説教臭い話し方になる

「あなたは、まだまだ苦労の仕方が足りないのよ」

「だから、あなたはそうなんですよ、人生ってものはですねぇ」

「オレの若い頃はな」

…と、このような口癖に続く話には、どこか説教じみたものが入り混じってくる。

自分の話にみずから酔ってしまう人もいる。「オレって、いい話しているよなあ」

といったうっとり顔で、とうとうと話し続ける。いわば、自己満足の独演会に若い人をつき合わせているのだ。

この人は「自分は、人よりもいろいろな経験をしているし、物事について深く考えている」という、まったく根拠のない思い込みと優越感だけで生きてゆく。

自分よりも経験を積んでいる人が目の前に現れても「あなたは経験はあるけれど、その経験を活かしきっていないね」と、お説教。

自分よりも物事を深く考えていそうな人が現れても、「一流大学を出たって、理屈をいうだけじゃあ、ダメなんですよ。行動力がなくては」と、やはりお説教。

井の中の蛙(かわす)の建材ふりを発揮しているうちに、だれからも相手にされなくなる。。そういう未来が待っている。

エラソーな説教癖のある人は、自分の未熟さ、鈍感さを自らPRしているようなもの。

【話し方のツボ】説教臭い話し方になるのは自分の世界に閉じ込もっている証し。

①相手の実力を認める力量がないから、話し方が説教臭くなる。

②相手を「この人は、こんな人だ」と決めつけるから、説教をしたくなる。

③「いまの若い者は」「一流大学出は」とステレオタイプの人間観はダメ。

④根拠のない優越感が、尊大な話し方に表れる。

70 過ぎたことは、蒸し返すな

過ぎたことを蒸し返す名人がいる。「あなたね、結婚したばかりの頃、こんなひどいことをいったのよ。私、ショックだった」などと。

「だからわかったよ。謝っているじゃないか」といっても、「いくら謝ったって、私の心の傷は癒えない」と、ことあるごとに、こんな展開になる。

これは、やめたほうがよい。夫もいいかげんイヤになってきて、「うるさいんだよ。いつまでもそのことを蒸し返すなら、もういい、オレは、ここを出てゆく」といった事態にもなりかねない。

「あのとき楽しかったわよね。私、うれしかった」というならいいが、相手の失敗や過失を蒸し返しては、

「あなたのせいで、こんなになった」

「私は間違ってはいなかった。あなたが悪かった」

「あなたがこんなことをしなかったら、もっとよかったのに」

…これでは相手も、うんざりである。

自分の将来に、夢や希望を持てない人は、こうなる傾向が強い「来年には、こんな楽しみがある」という予定のある人は、むかしのイヤなことを忘れている。前向きな気持ちがない人が、ことあるごとにむかしのイヤなことを蒸し返す。

夢のある人は、話し方も明るい。また、明るい話し方が身についてくると、自分にも周りの人にも、希望が生まれてくる。

 

【話し方のツボ】過ぎたことを蒸し返して相手を責めてはならない。

①過ぎたことを蒸し返すたびに、相手は「イヤな感じ」を味わっている。

②前向きな人は、話し方が明るい。

③夢を語るときは、人はだれでも明るい話し方をするもの。夢を持とう。

④新婚さんを見よ。幸せな人は、幸せな心が話し方に表れる。

— コラム – いい訳はしないほうがいいのか、したほうがいいのか

よく、「ヘタな言い訳をするな」という。しかし、もし私たちがいっさい、言い訳せずに暮らすようになったら、どうなるか。

「あなた、晩ごはんつくるの面倒臭いから、あなたつくってよ」「やだよ、オレだって面倒だ」「じゃあ、どうするのよ」「おまえがつくれよ」「いやよ」「なにを」と夫婦喧嘩が勃発する。要は、面倒だ、という正直な気持ちがケンカの原因になっている。

ところが、言い訳を使って会話をすると、「あなた、私ちょっと体調が悪くて、晩ごばんあなたつくってよ」「そうしたいんだけど、ごめん、いまぼくもちょっと忙しくて」「じゃあ店野物でも取ろうかしら」「そうしよう」と丸く収まる。言い訳は、人とのケンカを避け、平和的にことを解決するするための知恵であるようにも思うのだ。

ヘタな言い訳でもしてくれるから、「そうか、じゃあ、しょうがないな」と、ことを荒立てることをしなくてすむ。有効な言い訳はしたほうがいい。