「何度同じことをいっても同じ失敗を繰り返すんだから、ある意味たいしたものですよ。あなたみたいな人を部下に持てて、私はとっても幸せですよ」といった、イヤミっぽい叱り方をする人がいる。
「どうして、こんなに部下に手を焼かされるんだろう。ああ、イヤだイヤだ。やってられないよ。そう思うだろう、おまえ自身も」とグチっぽい叱り方をする人もいる。
「お願いしますよ、ほんとうに。約束したことは責任を持って、やり遂げてくれなくちゃあ。ねえ、頭を下げますから、この通り」と卑屈に哀願するような叱り方をする人もいる。
いずれにしても「いい叱り方」ではない。
上手な叱り方のコツは、相手に「これは叱られても仕方ない」と納得させられるかどうかにある。とはいっても、大声を出してガンガンわめき散らせといっているのではない。もっとよく考えて、思いやりを持って叱るのがよい。
よく考えるとは、
「どう話せば、自分はやってはいけないことをしたのだと反省してくれるか」を考えることである。
思いやりを持つとは、
「よく叱ってくれた。いま叱られたことは、これからの自分のために有益であった」
と理解させる話し方をすることだ。
【話し方のツボ】ただ叱ればいいというものではない。相手が納得できる叱り方を。
①「気分が悪いだけだ」と思われるのではなく「叱られてもしょうがない」と思わせる。
②「うるさいな」と思われるのではなく「叱られてよかった」という叱り方を。
③「感情的になっている」と思われるのではなく、「私のためを思って叱っている」。
④ただイヤな思いをさせるだけの叱り方ではなく、相手にとって有益になる叱り方を。
72 納得できる叱られ方、納得できない叱られ方
「叱られても仕方ない」と納得できれば、すなおに「申し訳ありませんでした」となる。
しかし反対に「冗談じゃない。なぜ、そんないわれ方をされなくちゃんらないんだ」と反発してしまうような叱り方もある。そのひとつが、だれかと比較して、叱るとき。
「同期の○○さんを見てごらん。あんなにがんばっている、それに比べて君は…」という叱り方は、「どうせ私はダメですよ」と、投げやりな気持ちにされてしまう。
また、「だから、いまの若い者は頼りにならないんだ」「仕事なんてものは腰かけぐらいにしか考えていないのかもしれないが」といったステレオタイプな叱り方では、叱る人のセンスが疑われるだろう。
「この、ダメ社員」「だから、おまえは頼りにならないっていうんだよ」「アホだなあ、君は。死ななきゃ直らないんじゃないの」といった、全面的に否定するような叱り方の人は、まず鏡に向かって叱ることをおすすめする。
「まだまだだね。もっともっとがんばってもらわなくては」といって叱る人は、いくらがんばってもうまくいかない部下の心情に気づいているだろうか。「いったい、どれだけがんばれば、ほめてくれるんだ」と、かえってやる気を喪失させている。
叱り方のうまい人は、必ず逃げ道を用意しておいてやるものだ。
【話し方のツボ】努力を認めない叱り方ではなく、認めるべきところは認めて叱る。
①第三者と比較して叱ってはならない。その人のことだけを叱る
②ステレオタイプのの叱り方はしないこと。罪を憎んで人を憎まず、の叱り方を。
③とことんまで相手を追い詰めるのはダメ。名誉挽回のチャンスのある叱り方を。
④ほめてから、叱る。努力を認めない叱り方はダメ。
73 叱ったあとに、何をすればいいか
叱ったあとは、叱ったほうも叱られたほうも、お互いに気まずい。気軽に「どう調子は? うまくいってる」などと話しかけることができなくなることが多いが、この気まずい状態は早く断ち切らなければならない。
叱り方のヘタな人は、叱りっぱなしにする。しかし叱り方のうまい人は、叱ったあとには必ずフォローの手を入れる。本田宗一郎さんは、烈火の如く叱ることで有名だったが、こっぴどく叱ったあとには、盛大にほめてやることを忘れなかったそうである。だから叱られた側もシコリを残すことはなかった。
なぜ叱るのか。ひとつには、その人の欠点を改めさせるために。そして、もうひとつには、その人の持っているいいところをさらに伸ばしてやるためにであろう。
さて叱ったあとに、その人が欠点を改めて、長所を伸ばす努力のあとが認められた
ときには「やればできるじゃないか。いや、たいしたもの。見直したぞ」とほめてやる。それができたのが本田さんだったのだろう。
もしだれもほめてくれないのであれば、自分のほうから「やり方を変えました。その結果、こうなりました」と報告をしたらどうか。
そういう部下に接すれば、上司のほうも、その後の叱り方が変わってくる。頭ごなしに「ダメだ、そんなやり方は」ではなく、「もっと、こうしたほうがいいんじゃないか。私なら、こうするよ」と、やさしい叱り方となる。
【話し方のツボ】叱りっぱなしはダメ。反省のあとが認められたら盛大にほめてやる。
①叱ったあとに関係が気まずくなるのは、フォローがないから。叱った相手に気を遣おう。
②感情にふりまわされて叱るのではなく、何のために叱るのか考えて叱る。
③失敗だけに注目しているから叱りっぱなしになる。ほめるべきところも見つける。
④叱りっぱなしでは人は育たない。叱ってほめるから大きく育つ。
74 叱りベタな人は、相手を見ずに叱る
叱られると「負けてなるものか」と、気持ちを発奮させる人は見守るだけでいいだろう。叱られるとクシュンとなって、やる気をなくしてしまう人には「私もがんばるから、あなたもがんばってね」と、応援するような話し方をするのがよい。
いくら叱られてもあっけらかんとしている人には、ときにはビシッと「何やってんだ!」とお灸をすえるような叱り方をすることも必要だろう。
しかし、叱られると考え込んでしまうタイプの人には、ひとつひとつていねいに説明して「わかった? 以後、注意するんだよ」と話してやるほうがいい。
相手がどういう性格なのか把握して叱ることが大切で、だれでも彼でも「ダメじゃないか!」のワンパターンというのは、叱り方のヘタな人がやることだ。
また相手が、自分に対して好意を持っている人なのか、それとも内心「あの人とは、どうもうまくいかないのよね。ウマが合わないっていうか」という苦手意識を持っていそうな人なのかでも、叱り方は変わる。
好意的な相手であれば、少々荒っぽいことをいっても信頼関係は崩れない。しかし必ずしも気心が知れていない相手には、叱るというよりも、ていねいにかんでふめくるような話し方をしておくのが無難である。
【話し方のツボ】だれにでも同じ叱り方ではなく、相手に合わせた叱り方をしよう。
①ダメ上司の叱り方には、本人の性格が出る。いい上司は、相手の性格に合わせる。
②発奮タイプには大いに叱り、考え込むタイプには論するように叱る。
③カッカしやすいタイプには落ち着かせるように叱り、のほほんタイプにはビシッと叱る。
④自分とは性格が異なるタイプほど、配慮しながら叱る。信頼関係が崩れやすいから。