Pocket

button-only@2x 「うん、わかった」という人は、自分なりの解釈で失敗する

ただ、黙って聞いているのではなく、聞き逃したところがあれば聞き直し、疑問に思うところは確認すること。そういう癖をつけておかないと、前項で述べたことと同じ結果になる。聞き逃したところ、疑問に思うところに自分なりの解釈を加えてつじつまを合わせるために、人の話を曲解することとなる。

「新聞に、高血圧の予防に関する記事が載っていたわよ」と今朝、妻がいっていたことを思い出して、夜家に帰ってからその日の朝刊を調べたが、そんな記事はない。妻に聞くと、「きょうの朝刊じゃないわよ。きのうの夕刊よ」。

上司から「取引先の○○さんに、中元を贈っておくのを忘れないように」といわれていた。ところが後日「取引先の○○さんから中元がくるかと思っていたが、こないようだな」と上司がつぶやく。「○○さんからこないのだから、こちらから贈る必要もないのだろう」と思ってそのままにしていたら、上司が「○○さんへ中元を贈ったか」と聞く。

「贈っていない」と答えると、「忘れずにって、いっておいたじゃないか」。

そのさいに「それ、きょうの朝刊?」「それでも、こちらから贈っておくほうがいいのですか」と確認しておけば、そんな失敗はしないですんだことなのにだ。

聞き上手というのは、何もいわずに人の話に耳を傾けることをいうのではない。会話しながら、人の話をよく聞くことをいうのである。

【話し方のツボ】人の話の疑問点に、わかったふりをしないこと。

①よく聞かずに「早のみこみ」はダメ。会話での誤解のほとんどはこれが原因。

②「わかったか」と問われて、わかってもいないことを「わかりました」と答えてはダメ

③聞いてもいないのに「うんうん」はダメ。よく聞いているから疑問もわく。

④確認は、その場で、そのときに、「あとで」と考えていると忘れてしまう。

button-only@2x 「うん、わかった」という人は、自分なりの解釈で失敗する

40 聞き上手な人は、会話の行間を読む

行間を読む、という。そこに書かれていないところに作家の真意を読み取るということだが、人の話を聞いているときにも、会話の「行間」を読む努力が必要だ。

ふだん私は、陽気であろうと心がけているし、笑い話は歓迎するけれども、そんな私にしても、気分的に、ふさいでいるときもある。そんなときに笑い話をされれば愛想笑いはするけれども、できれば、ほっておいてほしい。「斎藤には笑い話をしておけばいい」と簡単に決めつけられても困る。

行間を読むことができる人は、そういう私の心境を感じ取って「じゃあ、またくるよ」といい残して静かに立ち去って、ひとりにしておいてくれる。ところが行間を読めない人は、私の心境などおかまいなしに騒ぎ立てておいて「どうしたんですか、きょうは。なに暗い顔をしているんですか。笑いましょうよ、斎藤センセイらしくない」と、こうなってしまうから困るのだ。

聞き上手になるためには、相手が語らぬことをも読み取る、感じ取ることができなければダメだ。

その人の声のトーンから察する。表情を、よく見る。仕草を見る。その人のいまの心境を感じ取る。これが広い意味での聞くということになる。会話の行間を読みとる、ということではないだろうか。

【話し方のツボ】相手の言葉だけを聞くのではなく心境を感じ取る力を養おう。

①ひどく傷ついている人には「がんばれよ」ではなく「だいじゅうぶ」と。

②ひどく落ち込んでいる人には「元気だせよ」ではなく、しばらくひとりにさせる。

③人には言葉には出せないこともある。その心境を察することができるのが聞き上手。

④聞き上手な人は、相手の表情や仕草をよく観察している。だから人の気持ちがつかめる。

button-only@2x 「うん、わかった」という人は、自分なりの解釈で失敗する

41 聞き上手になるコツは、「やさしく受け入れる」という表情から

人に耳がふたつで、口がひとつしかない理由は、

「ひとつ話をしたら、ふたつ相手の話を聞かなければならない」

からだそうだ。これも聞き上手になることの大切さを述べている。

ただし、ただばくぜんと相手の話に耳を傾けていればいいというのではなく、聞き方というのがある。それは、ひと口でいえば包容力といえるのではないか。

相手の顔をにらみつけるようにして話を聞くのはダメだ。ムスっと不機嫌そうに話を聞くのもダメ。アゴを突き出してケンカを売るようなあいづちの打ち方は問題外。

人の話は、その人の「お母さんになったつもり」で耳を傾けてみてはどうか。

あまり気乗りはしないだろうが、そこはおつき合い。相手が職場の上司だろうが、後輩だろうが、どんな相手であれ、「やさしく受け入れる」という表情で耳を傾けることができれば、好感を持たれることは間違いない。

その意味では、一般的には、男性よりも女性のほうがずっと聞き上手のようだ。男性には不機嫌そうな態度で人の話を聞く人が多いように思う。いわば批判的な態度で、そんなつもりはなくても、反論の構えになっていることがある。一方、女性は、親身になって人の話を聞くという態度が見える。男性も見習いたい。

【話し方のツボ】不機嫌な表情ではなく、愛情を持って話を聞こう。

button-only@2x 「うん、わかった」という人は、自分なりの解釈で失敗する

42 人の話は最後まで聞かなければならない、こんな理由

「人の話は最後まで聞くべし」、という。最後まで聞かないと、相手がほんとうは何をいいたかったのかがわからず、恥をかくことにもなる。

「私、○○さんのことを性格的に好きになれなかったんだけど」と、だれかがいう。そこで「そうよねぇ、そう。○○さんって、イヤな人よねえ。私もだいっ嫌い。この前なんかね、○○さんとこんなことがあったのよ。失礼じゃないの、ねえ」と口をはさむ。

ちょっと待て、相手は「好きになれなかったけど、つき合ってみれば意外といい人で、じつは今年の秋に結婚することになったの」と続けるつもりであったかもしれぬ。

「私とは性格は合わないけれど、○○さん、あなたに好意を持っているらしいわよ」

という話であったかもしれないではないか。「でも、○○さんね、常務に見込まれて今度、部長に抜擢されることになったんだって。そうなったら私たちの上司になるんだから、おおっぴらに悪口はいわないほうがいいわよ」という話であったかもしれない。だから、人の話は最後まで聞こう、なのだ。

人はたいがい、いいたいこと、大切なこと、結論といったものは、最後のほうにいうものだ。だから最初のふた言、み言で、相手の真意を早合点して口をはさんではならない。

もちろん話の腰を途中で折られた相手は、あなたに反感を抱くだろうからという理由もある。

これは人から嫌われないための心得でもある。

 

【話し方のツボ】人の話は最後まで聞かないと、早トチリの失敗をする。

①人は、大切なことは最後にいう。途中で話を遮ると、大切なことを聞き逃す。

②「だから、そういうことなんでしょう」と口をはさむのではなく、「うん、それで?」。

③相手の言葉に、言葉を被いかぶせない。相手が話し終わってから、こちらの話をする。

④長い話でがまんできないほどイライラしてきたら、「ちょっと失礼」とケータイをかけにゆくフリをする。