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button-only@2x 「実のある話」より「実のない話」で、人間関係はよくなる

初対面の人と会ったとき、ご近所の人と電車の中で偶然出くわしたとき、ある人と、ふたりきりになってしまったとき、むかしの知り合いに久しぶりに会ったとき……さて、どのような話から会話を始めればいいのか。

ありふれてはいるが使い勝手がいいのは、その日の天候。「きょうは、いい天気ね」「暑いとまいります。一日にハンカチが何枚も必要になって」。世間話もいい。

「お忙しいですか」「いやあ貧乏暇なしで」といった話。新聞のスポーツ記事から「野球は、ご覧になりますか。今年のジャイアンツは弱いですねえ」もよい。

私は、旅先で知り合った人と交友を深めるためによく使うのは、ご当地話である。

「こわい、というのは、こちらの方言で疲れたという意味なんですってねえ。いや、こわい、こわいと、みなさんがおっしゃるものですから、幽霊でも出たのかと思いました」といった話である。これは盛り上がる。

奇をてらってはならない。さしさわりのないことをいっておけば、よろしい。いや当たりさわりのない話だから、くったくのない会話ができる。人は人生の三分の一は眠っているというが、人の会話三分の一は、当たりさわりのない世間話から成り立っているのではないか。おかしないい方になるが、充実した、さしさわりのない話ができるかどうか。これができない人は、人づき合いもうまくない。

【話し方のツボ】人との間が持たないのは当たりさわりのない世間話ができないから。

①話題に困ったときの対処法。天気の話、景気の話、スポーツの話、芸能人の話。

②「きょうの天気は」と、当たりさわりのない世間話をできるようになろう。

③芸能リポーターから学ぼう。聞いている人を飽きさせないコツは、世間話にあり。

④主婦の井戸端会議に学ぼう。友だちの輪は、世間話で広がってゆく。

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23 「のらくら話法」の人は、大人になりきっていない

「映画? うん、いってもいいんだけど、どうしようかなあ。おもしろいの? ふーん、映画だけ? 見終わってから、どこかいくの? あ、そう。うーん」

「それ、ぼくがやる仕事なの? いや、ぼくがやってもいいんだけど、でも、ぼくじゃなくてもいいんじゃないの。いや、けっしてやりたくなくて、そういっているんじゃないんだけどね」

…と、のらりくらりと話す人には、「どうするのか、はっきりいってくれよ」といいたくもなろう。

こういう「のらくら話法」の人には、自分のもののいい方が、どんなに相手をイライラさせているのか、わからないようである。

ものごとを決められないのは、心理学的にいえば幼児現象といえる。年齢的には立派な大人だが、精神的には大人になりきっていないのである。人に甘え、人の気持ちを察することができないのは、考え方が子供である証しだ。そういう自分を自覚すること。自覚するだけでも、話し方はずいぶん変わる。

性格的な欠点といったものは、だれにでもある。その欠点が如実に現れるのが話し方で、それを自覚し、反省し、矯正できるのが大人だ。いつまでも無自覚のままで、のらりくらりととらえどころのない話し方をするのが、子供である。

【話し方のツボ】じれったいいい方は人をいら立たせるだけ。

①「どうしようかな」と心の中で思ってもいいが、口に出していうのはやめよう。

②甘えたところのある自分を反省しよう。はっきりとものをいえるようになる。

③「どうしよう」と迷ったところで、相手が決めてくれるわけではない。自分で決める

④迷うのは五秒でいい。五本、指折り数えたら、はっきり意思表示しよう。

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24 謙遜のひと言を、まともに受け取ってはならない

ある人が、オーストラリアに旅行した。ホテルで知り合った白人が、「ここは、辺境の地ですからねえ」といったので、てっきり(この人はイギリス人だから、こんないい方をするのか)と思い込み、話を合わせるつもりで「まったくですねぇ。英語をしゃべるといっても、こちらの国の人の英語はひどくナマっているので、さっぱり聞き取れません」といった。

イギリス人ならば、そういえば喜ぶだろうと思っていたのに、不愉快そうな顔をする。あとでわかったのだが、その人はオーストラリア人で、自国を謙遜して「辺境の地」といったらしい。まさに赤面の思いだったそうだ。

ある人が、A大学の悪口をいうから、ライバル校の出身者かと思って、調子を合わせて悪口をいっていると、じつはその人はA大学の出身者であることがわかる。これも自分の出身大学を謙遜したのだ。

相手の謙遜をまともに受け取って、つい悪口をいってしまうこともあるだろう。

だから「あまりよく知らない人」が相手のときは調子に乗ってはならない。要注意。

人の悪口というのは盛り上がりやすく、知らず知らずのうちに、とんでもない発言をしていることも多い。だから怖い。

【話し方のツボ】だれかの悪口をネタに人と仲よくなろうとは考えないこと。

①悪口で意気投合した相手とは、関係は長続きしない。きょうの味方は、あしたの敵。

②欠席裁判は、お互いにイヤな後味を残すだけ。その人のいない場所で、悪口はいわない。

③相手がだれかの悪口を持ちだしたら、「あの人は、いい人ですよ」とほめよう。

④こちらがほめれば、相手は悪口をいうのをやめる。悪口には、ほめ言葉で対抗しよう。

【コラム】心の内は開示したほうがいいのか、隠しておくほうがいいのか

お互いに、自分の心の内にあることを包み隠さず打ち明けることができるのが、親しい間柄であることの証というが、これは必ずしも真実ではない。

心の内を開示したために、相手に心理的な重荷を背負わせることもある。「お金に困っている」と打ち明けられたら、親しいつき合いがある人ほど「自分が、どうにかしてやらなければ」という気持ちになるに違いない。

相手に、そんな心配をさせることが友情であるのかどうか。親しい相手だからこそ、あえて黙っていなければならないこともある。

ただし、自分の心の内にあることを述べずとも、心を開いた話し方はある。相手の目を見て、心置きなく笑い、おだやかな口調で語り、相手の話は誠意をもって耳を傾ける。

ムッツリとした表情の話し方、相手と目を合わせようとしない話し方、そういう心を閉ざした話し方では心は通わないということだ。

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25 「とにかく、やってくれ」と命じられても、気持ちよく「はい」とはいえない

「ちょっと、お願いしたいことがあるんだけど」と話しかけられた人は、決まって不安そうな表情をする。

お願いって、いったい何?

自分ができないことを、むりやりお願いされるんじゃないかしら?

都合のいいことをお願いされて、ふりまわされてしまうんじゃないかしら?

自分がやりたくないことを、押しつけられるだけじゃないのか?

うまいことをいわれて、だまされるんじゃないか?

ヘタに引き受けたら、危ない目にあうんじゃないか?

そうだったら、どうやって断ればいいんだろう?

と様々な「?」が頭の中を駆け巡っているから、知らず知らずのうちに「不安そうな表情」となってしまう。

さて頼み方が上手な人というのは、相手の心に生じるこういった「?」という不安感を取り除くのがうまい人だ。

一番やってはいけないのは、権力を笠(かさ)に着て、「上司のいうことが聞けないのか。いいから、とにかく、やってくれ」という頼み方だろう。自分の言葉に説得力がないから、力に頼ったいい方になる。

仕事ができる人というのは、人に仕事を頼むのがうまい人だ。強引に「やれ」というのは、仕事のできない上司の象徴である。

【話し方のツボ】人に何かを頼むときは相手の頭に生まれる「?」を取り除く。

①「黙っていうことを聞け」ではなく、「何か疑問点は?」と相手の気持ちを確認する。

②相手が「シブシブながら」になるには理由がある。その理由をよく考えてみよう。

③「とにかく、やれ」は、仕事ができない上司の証し、できる上司は聞き上手。

④命令は、ひとつの話し合いだ。話し合う態度で命令を出すのがよい。

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26 ヘタクソな頼み方の多くは、説明不足が原因

上手な話し方で頼み方をすれば、相手は納得してくれる。しかし、ヘタクソな話し方で頼み事をすれば、相手の不安感は増す。

ヘタクソな話し方としてあんがい多いのは「説明不足」というケースだ。ある人が今回新聞に出す広告の原稿を持ってきて、「これ、お願いしますね」といい残し、そのままいってしまう。これでは受け取った人が困る。

まずは「何をしてほしい」のか、よくわからない。

原稿に間違いがないかどうか校正してほしいというのか。広告は、こういう内容のものになると、ただ確認しておけばいいのか。こちらから広告会社なり印刷会社なりに送付しておいてほしいというのか。いますぐやってほしいのか。時間が空いたときでいいのか。

さらにいえば、自分にしてほしいというのか。それとも自分のいる部署の責任者にやっておいてほしいということなのか。

これでは「お願いされるのはいいけれど、どうすればいいの」と不安が増すばかりだ。説明不足にならないためのポイントを前もって整理しておき、明瞭に指示を出すのは、最低限の「頼み方」だ。

そうしないと頼まれた人が困る。仕事が停滞するから、あとになって頼んだ当人も困る。

【話し方のツボ】「何を」「だれに」「どう」命じるのか整理してから命令を出そう。

①「だれでもいいから、やっといて」ではなく、「だれ」に命じているのかはっきりさせる。

②「てきとうにやっといて」ではなく、「どのような方法」でやるのか指示する。

③「なるべく急いでやっといて」ではなく、「いつまで」にやっておくのか期限を示す。

④任せっぱなしにしておくのではなく、「やり終えたら連絡してね」といっておく。