多くの人たちに好かれることは、そんなにいいことなのか。とりつくろったり背伸びしたりせず、自分がいちばん心地よいと思える方法で過ごし、自分なりの考えや物の見方ももっていたら、ある人には好かれ、ある人からは嫌われるというのは当然である。
人の好みはそれぞれだ。好きになるか、嫌いになるかもそれぞれなのである。
となると、まわりじゅうの人に好かれようと思ったら、かなり不自然なことをしなければならない。
無理して人に合わせ、自分を押し殺し、イヤなことがあってもひたすら我慢に我慢を重ね、何でも「はいはい」と逆らわず、相手が右を向けといったら右を向き、左を向けといったら左を向き、そこまで努力しても、そんなあなたを「自分がない」と批判する人がきっと現れる。
それであなたは幸せだろうか。無理をすることはない。
職場でスムーズな人間関係をつくたいなら、集団のなかでうまくやっていく方法を見つければいい。恋人がほしいなら、自分を磨けばいい。「嫌われたってべつにいいや」と思ったら、人目など気にせずに思ったとおりに生きればいい。どうしても譲れないこだわりがあるなら、まわりの人とこだわりを秤(はかり)にかけて、優先順位の高いほうを選べばいい。それでもあなたと価値観の似た人は、あなたに興味をもってくれる。万人に好かれなくても、あなたと親しくなりたがっている人はかならずどこかにいる。
それでいいではないか。
もうひとつ。あなたには、「好かれない自分」を自分自身で嫌っているということはないだろうか。
あの人から嫌われたといっては自己嫌悪に陥り、あの人に悪口をいわれたとっては落ち込みそっけなくしたといっては嘆き…。そうして、そんな自分を受け入れがたくなり、どんどん自分が嫌いになっていく。
あなたにもしそういう傾向があったなら、その傾向をすこしずつ直していこう。
まず、自分を好きになってほしい。
考えてもみてほしい。自分は自分を嫌いなのに、人から好きになってほしいというのは、あまりに都合がよ過ぎはしまいか。そんな横着な人が、人から好かれるだろうか。
「人に好かれる」ということは、だれにとっても、とても大切なことだ。私たちは、自分の人生についてなんだかんだと考え、悩んだり笑ったりしているが、「人に好かれる」ことも人生の大きな目的なのではないか…というふうにも思う。
人と人とが出会い、笑い合い、いっしょに食事をし、信じあい、頼ったり頼られたりしながら、時にはけんかもする。夜も眠れないぐらいに後悔し、なんとか「仲直り」をしたいと努力もする。このような日々、そのこと自体が「豊かである」ということも忘れてはならない。