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button-only@2x 腹が立ったら黙って1000数える

【15分もすればその話は終わっている】

どうして人間関係というものは、こんなにうまくいかないのだろうか、と感じることがあるでしょう。自分が悪いのだろうか、自分はみんなから特別に嫌われているのだろうか、と考えこんでしまうこともあります。

でも、違う角度で考えると、人間関係とはうまくいかないことになっているとも言えるのです。たとえば、子どもが生まれてから数十年間いっしょに住んでいる親子でも、まったく相手のことを理解し合っていない親子がいます。

兄弟姉妹でも、性格がまったく違い、お互いを嫌っていることがよくあります。

愛し合って結婚したはずの夫婦の性格が一致しないケースは、珍しくない、などというレベルではありません。

そう考えると、まったく違う環境で育ってきて、違う価値観を持ち、異なる利害関係のもとにある他人と、人間関係が自然にうまく行くほうが奇跡なのです。

すべては違っているのですから、感じ方も違うし求めるものも違う、そうなると、同じ問題に対しても違った結論がでてきます。だから意見が合わないのです。元をたどると、意見は一致するはずがないともいえます。

つまり、意見が違うからといって腹を立てたりする必要はまったくないのです。冷静になれば、そのことを思い出します。少し時間をおくために、腹が立ったら1から1000まで数えればいいのです。

だいたい15分はかかりますから、その間に冷静さも取り戻します。その話題もきっと終わっているでしょう。終わってしまえばなんの影響もなかったことに気づく場合もあります。

腹を立てる必要がなかったわけです。

では、意見が一致するのはなぜでしょう。それは会議を終わらせたいからです。いつまでも会議をしていることはだれにとっても苦痛です。さっさと終わらせてビールでも飲みたいな、と考えるのです。

もうひとつは利益です。一致することで利益が全員にあるとわかれば、全員が一致します。多少違った意見があっても黙るものです。兄弟げんかも夫婦げんかも、自分が100万円もらえると知ったとたんに収まるものです。

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【一日黙って人の話を聞く】

— 聞くことが楽しくなるまで聞く —

話のうまい人、面白い人というのは、集団の中で目立つし、それなりに尊敬を集めます。子どものころから学校で先生の話を聞かされているせいか、みんなの注目を集めて話をする、ということに魅力を感じる人は多いのです。

授業などでも、みんなの前で発表をして拍手を浴びることに快感を感じた経験もあるでしょう。

ところが、聞くほうは軽視されがちです。何度かこの本でも触れたように、人の話を聞くことは非常に重要なのですが、黙って人の話を聞く人を尊敬するという気持ちは湧きません。

これも、子ども時代の名残でしょうが、なにしろよく話す人、意見を述べる人が人気者になれるのです。

人間関係で問題が起こったときに必ずもめるのが、自分の話を聞いてくれない、ということです。とくに、夫婦関係、男女関係で多いのですが、相手が話を聞かない、まともにとりあってくれない、と言うのです。けれども、相手に確かめると、決まって「きちんと聞いている」と言います。

これは、双方とも相手の言うことをしっかり聞いていない証拠です。自分の意見をまくし立てるあまりに、相手の言葉が耳を素通りしてしまうのです。とくに興奮すると、人間は相手の話の内容より、とにかく自分が正しいことを通そうとしてしまいます。

お互いの話がかみ合わないな、と感じるのはこの状態になったときです。すると、「こんな話、いつまでしてても先に進まない!」とどちらかが暴力的に打ち切ってしまい、取り返しがつかないこととなります。

そういうときには、どちらかが一日黙って、相手の話を聞く日にすることをお勧めします。どちらが先に聞くかは、公平にジャンケンなどで決めて、とにかく一日、または一時間でもいいですから、なにも言わずに相手の言い分を聞くのです。話が終わったら、今度はもう一方が話し、最初に話した人は聞きつづけます。

最初は、反論したくなったり、腹が立ってきたりしますが、しばらく話を聞くうちに、自分の言いたいこととの共通点が必ず見つかるはずです。一日経って興奮も冷め、冷静に聞くことができるのです。

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【家族のケンカは放っておく】

–「遠い日の原因」は忘れるしかない —

長年一緒に暮らしている親子や兄弟姉妹でもいがみあい、憎みあうことがあるという話がありましたが、家族のケンカは、どう解決すればいいのか考えてみましょう。

ケンカには原因があるものです。その原因を解決すればケンカは収まるのではないかと考えます。ところが、家族のケンカには、直接思い当たる原因がない場合があるのです。

その場では、物を勝手に使ったとか、前からの約束を守らなかったとかいう、「その日の原因」があるのですが、どう考えてもケンカをするほどのことではないものばかりなのです。

朝ご飯を食べなかった、歯磨き粉をこぼしたまま、電気を消していない、手紙を出してくれなかった、犬を散歩に連れて行かない・・・こういったことが原因となって、物を投げるような大ゲンカになることが多いのですが、とてもそんなに騒ぐほどの大きな問題ではありません。

そこには、「遠い日の原因」がバックボーンとしてあるのです。親子ならそれこそ幼稚園時代から、夫婦なら恋人の時代からの積年のうらみではありませんが、「遠い日の原因」が、ある日、潜在意識から突如浮上して、つまらないこと、「その日の原因」をきっかけに爆発するのです。

その証拠に、数日後には、違う「その日の原因」でケンカがはじまり、結局「遠い日の原因」に行き着くということが起こります。

これは、もうその原因の詳細さえもわからなくなっているほど潜在的なものなので、直接解決するというより、「忘れる」という対策の方が効果的でしょう。

たとえば、中学校の時に、兄が約束していたのに弟のサッカーの試合を見にいってやらなかった、といったことがトラウマのように残っている場合だったら、これから、いっしょにサッカーをして遊ぶことを考えればいいのです。

弟の心は、そういった前向きな行為で癒され、昔のこと、「遠い日の原因」など忘れてしまうでしょう。

夫婦関係でもめることも、やはり「約束を守らない」といった多いのですが、それなら「結婚10周年にハワイ旅行に行こう」と新たな約束をすればいいのです。

昔の約束違反などその約束の前に消えてしまいます。守れなかった大変ですが。