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【すべての問題に答えを出そうとしない】

この本の読者の中には、非常に責任感が強くて、何とかして家族や職場の問題を解決してあげたいと考えている人がいるでしょう。だれでも、多かれ、少なかれ問題を抱えて、つねに解決方法を求めているのだと思います。

世の中に目を転じると、不景気をはじめ、不良債権、金融不安、リストラからピッキング窃盗、ひったくりまで、これも解決して欲しいことが山積みです。

こういった世の中ですべての問題を一気に解決しようとしても無理なように、自分の身のまわりにある問題も、すぐに全部解決しようとするのは無理があります。

ある程度までは、人の力を借りて、解決していくことができるでしょうが、手一杯になる一線があるものです。

たとえば、経済的、物理的な問題ならどんどん解決していくことができても、最後に、人の心の問題に行き着いたときに、それ以上は無理に進むというわけにはいかなくなるのです。

心の問題の他に、人間関係の問題なども、すぐによくしようというわけにはいかない場合がほとんどでしょう。

そんなときに、「無視する」という方法があります。まずは、その問題がそんなに重要かどうかを冷静に考えます。ひょっとしたら、さほど重大な問題でもないことに気づくかもしれません。

また、緊急性があるかどうかを検討します。急いで解決しなければならない問題は、そう多くはないものです。それまで駆け足でやってきたことも、もう一押しというところまでくれば、慌てないほうがいい場合があります。

さほど重大でもない、緊急性もないという問題は、しばらく放っておくのです。そこまできたら聞こえないふりをするというのは効果的です。

子どものしつけでも努力の結果はほぼうまくいって、もう一歩でできあがりだな、と思ったら、気づかないふりをするという方法があります。

子どもは急に自分に関心が向けられなくなって、ちょっと驚いたり不安になるかもしれませんが、自分の力でゆっくりゆっくり進みます。

そのほうが、本人のためにもいいのです。

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【できないことをしようとしていないか?】

— どこまでやるかはそのつど考える —

毎年、年末が迫るとみんなが忙しくなります。「師走(しわす)」というくらいで、お坊さんも走っていくほど忙しいというわけです。

けれども、年末はなぜ忙しいのでしょうか。仕事によっても違うとは思いますが、年末だからといって仕事そのものが増えるというわけではないのです。

よく考えてみると、年末には「やるべきこと」が増えるのでしょう。ふだんやらない、「お歳暮」にはじまり、「年末セール」「クリスマスイベント」「年末決算」「忘年会」「年賀状書き」、学校なら「期末テスト」「成績表記人」「終了式」そして、どこでも「大掃除」「仕事納め」となります。

そして、「やるべきこと」は、自分が関わる世界・社会の数だけ生まれるので、職場の自宅のほかに、地域、PTA、親の家、親戚、、趣味のサークル、ボランティア組織などに関わっていれば、その数のぶん「やるべきこと」が発生してしまうのです。

しかも、会社などは年末数日までにそれを終わらせようとするのですから、あらためて考えると、一年のうちでも12月だけにこれだけのことをやろうとするのが無理というものです。

これと同じで、「やるべきこと」があったとしても、必ずしもそれをやってしまうかどうかということは、それにかかる前に一度検討したほうがいいでしょう。

たとえば、人間関係で、一度に三、四人が関わるような問題の解決を求められた場合、二人くらいなら調整できるかもしれませんが、四人の人間の心をコントロールしようというのは無理があったりします。

心は物ではありませんから、当然揺れ動くわけで、一人がうまく行ったからといって、翌日も気持ちが変わらないかというと、そうではないことのほうが多いものです。手一杯だなと感じたら、前項のように、できるところまでまで手を打って、「しばらく放っておく」という方法があります。

できないところまでやろうとして失敗すると、自信を失ってしまうし、人からの信頼も揺らいでしまいます。

「やるべきこと」だからといって、無理をせず、ケースバイケースで判断をするということが人間関係の改善の基本です。

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【子どもは不完全だから発展する】

— 人は日々変化していることを知るべき —

人間関係の中でも、もっと大切なのが親と子の関係だと思います。いや、自分は仕事での人間関係のほうが重要だ、と言う人がもしいても、また、自分には子どもがいないから違う、と思っても、とりあえずこの話は大切です。

なぜなら、人間社会の基本が「家族」だからです。家族なしに社会は成立しません。

社会どころか、家族がいなくなれば人類そのものも早晩いなくなるのです。

家族とはそれほど重要なものです。そこでの親と子の関係は、社会にそのまま影響します。昨今言われる、「キレる子ども」などは、社会不安そのものにつながり、治安の問題になっています。

自分が子どものころ、どんなことを考えて過ごしてきたか、どんな人間になろうと考えていたかをまず考えてください。たとえば、多感な時期、中学、高校の頃に、どんな不安、不満をもち、どんなことに悩んでいたか。

その上で、子どもが今、何を思い、悩み、なぜ関係に問題が発生するのかをチェックしてみるのです。

たとえば子どもが夜更かしするということ。自分も夜更かししていたのではないでしょうか。「でも自分は親に迷惑はかけなかった」と言う人もいます。

本当にそうだったのでしょうか。ご両親は心配しながらも黙って見守っていたのかもしれません。

たとえば悪い友だちと遊んでいるとか。自分の友だちはみんな「いい人」ばかりだったでしょうか。また、親の目から見て「いい人」とばかりつきあっているからといって、本当に「まじめ」で「健全」でしょうか。ここでは、一流大学卒のエリートたちでも汚職もすれば他の犯罪も犯します。

子どもとの関係でいちばん大切なことは、「子どもは発展途上」にあるということです。まさに変化し、発展する不完全人間がそこにいるのです。完成した人格だと考えてはいけません。それに、10代の失敗など、いくらでもあとから挽回できます。

しかも、自分が知らないうちに少しばかり心配になるようなことをしていることを発見して、焦って頭ごなしに禁止したり叱ったりしたからといって、言うことを理解するでしょうか。自分がどうだったか、胸に手を当てて考える必要があります。